先生の愛が激重すぎる件
 一緒にエレベーターに乗り込んで、私は途中の階で降りる。
 
「じゃあ、また。おやすみ」

「はい。おやすみなさい」

 美味しいお酒と、素敵な曲。あんなに贅沢な時間を過ごすことができてとてもいい夜だった。

鼻歌交じりでドアを開ける。暗い廊下を進んでリビングの明かりをつけると、ソファーに座る先生の背中を見つけて息が止まりそうになる。

「ヒッ……ビックリした……。帰ってるなら灯りくらい付けたら」

 先生はゆっくりと私を見て「飲んできたのか?」といった。

「うん。だって、今日も正臣は帰ってこないかと思ったから……」

「……そうか。またあいつと一緒だったのか?」

「だったら何?」

 ひとりで居たくないから飲みに出かけた。鷹藤さんとはたまたま会っただけだし責められるようなことはしていない。

 真っ直ぐに彼を見つめた。すると先生は嘆息するとゆっくりと立ち上がる。

「……明日美は俺の女だろ?」

「そうだよ。そう思うならもっと一緒にいてよ。私の事縛り付けるくらい側にいてよ。私だって寂しいんだよ」

「分かってる」

「だったら……」

「ごめん」

「なんで謝るの?」

「情けない男だなって思ってさ。俺不器用だから、仕事もプライベートも両方上手く回せないんだよ」

 大きな先生が急に小さく見えた。だから思わず、

「別れた方がいいのかもね」

 そう口にしてしまった。でもこれは本心ではなかったのかもしれない。その証拠に、次の瞬間私はとてつもない後悔の念に苛まれることになる。

「……そうだな。明日美がそうしたいんなら、別れよう」

 信じられなかった。先生が別れを選ぶなんていちミリも考えていなかった。私は心のどこかで、別れなくて済むような努力を先生がしてくれるんだろうと考えていたのだと思う。

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