先生の愛が激重すぎる件
 翌朝、私は昼頃起きてヴェガと散歩に出かけた。昼間の散歩のコースはいつも決まっていて、必ず例のカフェに立ち寄る。

「こんにちは」

「やあ、いらっしゃい」

 マスターともすっかり顔なじみだ。

「ダンデライオンをお願いします」

 席に着くとメニューを見ずに注文する。

「ダンデライオンだね。ああ、そういえば、部屋探してるって言ってなかったかな?」

「はい、探してます。なかなか見つからなくて困ってるんですよね」

「じゃあさ、明日一部屋空くんだけど、どうかな」

 マスターは天井を指さす。

「え、もしかしてこの上ですか?」

「そうそう。二階は倉庫だから部屋はここの三階になるんだよ。しばらく美大生の子に貸してたんだけど、留学するんだってさ。十畳のワンルームで家賃は七万円。もちろん、見てもらってから決めてもらっていいよ。内見する?」

「見てみたいです」

「了解」

 そう言ってマスターは電話をかけ始める。

「見に来ていいよって」

「ええっ、今ですか? いいんですか?」

「どうぞ」

 私はマスターに連れられて店の裏側にある階段を上がった。丁度上がりきるころ、部屋のドアが開いた。

中から出てきたのはピンク色に染められた髪を無造作に束ねた小柄な女の子だ。

「マスター。あたしちょっとコンビニ行ってくる。部屋の中勝手に見ていいから」

「わかったよ」

 すると私たちの横をすり抜けて階段を駆け下りていく。慌てて声をかけた。

「あの、突然すみません。お邪魔しますね」

 聞こえていたと思うが、彼女は振り返らなかった。マスターは言う。

「いい子なんだけど、極度の人見知りなんだよ。さあ、中へどうぞ」

 部屋の中は白い漆喰の壁とヘリンボーンの床がカフェとお揃いでとてもおしゃれな雰囲気だ。水回りはリフォームされているらしく綺麗で使い勝手がよさそうだ。

広さは十畳と聞いていたがセミダブルベッドとパソコンが置かれた机、ハンガーラックしかないせいかとても広く感じる。玄関わきには引っ越しのダンボーが積まれていた。

「いいお部屋ですね」

窓からは店の敷地に植えられた桜の木がすぐそばに見えて、やわらかな日の光が降り注いでいる。

「ここに住みたいです」

 自然と口に出でいた。いくつか内見した物件はあったが心惹かれる部屋はなかったから。

「いいですか?」

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