先生の愛が激重すぎる件
「……それは誤解だ。確かに合コンは好きでたくさん参加しているが、真面目に付き合えるこ子を探しているんであって動機は不純なものではないぞ。付き合った人数は多いが長続きしないだけだ。今はいない」

 そう言われると、なんとなく友達に誘われたからという理由で合コンへ参加していた私の動機の方が不純に思えてくる。

「言っておくが俺は、好きな女しか抱かない主義だ。誰でもいいわけじゃない。遊び人って言われてるのは知ってる。でも、明日美にまでそう思われたくない」

 先生は少し悲しそうに顔を歪める。これじゃまるで私の方が悪い女みたいじゃないか。

「い、いつからですか? 私のことが好きって、そんなにいきなり言われてはいそうですかって受け入れられるわけがないじゃないですか!」

「……三年前からだよ」

 そんなに前から?

「三年前って、私が新人で入職してきたときからってことですよね」

「ああ、そうだ」

――「お待たせしました」

目の前には湯気の立つウニのグラタンが運ばれてきた。

「お熱いのでお気を付けください」

「ああはい。ありがとうございます。……まあ、食べながら話そうぜ」

 皿の端のホワイトソースはまだぐつぐつと音を立てている。

「おいしそう」

「本当に旨そうだな」

 取り皿に盛り付けたグラタンを私に手渡してくれる。
香ばしいチーズの香りと黄金色にとろけたウニが濃厚なホワイトソースと絡んで舌の上で溶ける。ホタテのシャキシャキとした触感もいいアクセントになっていた。

「おいしいです。今まで食べたグラタンの中で二番目に好きかな」

「ははは、二番か」

「すみません、つい」

 思わず口を噤んだ。飲食店で言わない方がいい話だったと反省する。

「でもこれが二番目だと一番目は余程うまいんだろうな。なんて店?」

「……キッチンクボ。父の店のグラタンです。父は洋食店を営んでいたんですって、こんな話、興味ありませんよね?」

「いや、聞きたい。話してよ」

 先生は興味ありげに私の目を覗き込んだ。
 
私はこの目を知っている。仕事中、困難な局面で民が顔をしかめる中、先生だけは違ってまるで少年のようにキラキラさせていた。

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