先生の愛が激重すぎる件
退職が決まってから少しずつ荷物の整理をしていたからか持ち帰るものは何もない。もらった花束を大事に抱えて私は間借りしているあの部屋へ帰る。
「マスター、こんばんは」
店に顔を出すとマスターはニコニコと出迎えてくれる。
「やあ、お帰り」
「これ、店に飾ってください」
「いいのかい。こんなに立派な花束!」
「いいんです。花瓶もないし、それに来週には部屋を出るので……」
結局私は東京での一人暮らしを辞めて実家へ帰ることにした。
仕送りができないことを母に話したら、ごまかし切れなくなってしまって……妊娠していることも、ひとりで産むことも伝えることになった。
そうしたらすぐにでも帰ってくるようにと説得されてしまったのだ。
妊娠した娘が家に戻るなんて世間体が悪いし迷惑がかかると私が言ったら母は泣いて叱ってくれた。
『大事な娘が大変な時に世間体なんて気にする親がどこにいるんだ』――って。
私が意地を張って東京にいることで母に余計な心配をかけてしまうとすれば、いくら他人に甘えだと言われようが実家に帰る方がいいと決断した。
相原先生のお姉さんからも実家に帰るように勧められ、里帰り出産ができる産科の病院をいくつか紹介してもらうことができた。だから安心して実家の近くで出産に挑むお産ができる。
帰省三日前。野原さんが私の送別会を開いてくれた。
向かったのはおしゃれなオーガニックレストラン。モデルや芸能人がこぞってSNSで取り上げるほど人気らしい。
店の予約をしたのが里奈だと聞いて彼女らしいチョイスだと笑ってしまったのだけれど、実家に戻ったら都会のキラキラを凝縮したようなお店にはいく機会もなくなるだろう。
ヨーロッパ貴族の邸宅を模したという内装は女性の私でもそわそわしてしまうほどゴージャスで、なぜか呼ばれてきたという相原先生は完全に浮いていた。
「小春が来れないっていうから先生呼んでみた。事情知ってるって聞いたからいいよね」
なるほど、里奈が小春の代わりに相原先生に声をかけたようだ。確かに院内で私の本当の退職理由を知っているのはこの三人と師長くらいだ。
「久保さんの送別会だっていうからきたのにこれっていわゆる女子会ですよね?! 僕、ここにいる必要あります?」
騙されたと言わんばかりの相原先生に今度は野原さんが釘を刺す。
「マスター、こんばんは」
店に顔を出すとマスターはニコニコと出迎えてくれる。
「やあ、お帰り」
「これ、店に飾ってください」
「いいのかい。こんなに立派な花束!」
「いいんです。花瓶もないし、それに来週には部屋を出るので……」
結局私は東京での一人暮らしを辞めて実家へ帰ることにした。
仕送りができないことを母に話したら、ごまかし切れなくなってしまって……妊娠していることも、ひとりで産むことも伝えることになった。
そうしたらすぐにでも帰ってくるようにと説得されてしまったのだ。
妊娠した娘が家に戻るなんて世間体が悪いし迷惑がかかると私が言ったら母は泣いて叱ってくれた。
『大事な娘が大変な時に世間体なんて気にする親がどこにいるんだ』――って。
私が意地を張って東京にいることで母に余計な心配をかけてしまうとすれば、いくら他人に甘えだと言われようが実家に帰る方がいいと決断した。
相原先生のお姉さんからも実家に帰るように勧められ、里帰り出産ができる産科の病院をいくつか紹介してもらうことができた。だから安心して実家の近くで出産に挑むお産ができる。
帰省三日前。野原さんが私の送別会を開いてくれた。
向かったのはおしゃれなオーガニックレストラン。モデルや芸能人がこぞってSNSで取り上げるほど人気らしい。
店の予約をしたのが里奈だと聞いて彼女らしいチョイスだと笑ってしまったのだけれど、実家に戻ったら都会のキラキラを凝縮したようなお店にはいく機会もなくなるだろう。
ヨーロッパ貴族の邸宅を模したという内装は女性の私でもそわそわしてしまうほどゴージャスで、なぜか呼ばれてきたという相原先生は完全に浮いていた。
「小春が来れないっていうから先生呼んでみた。事情知ってるって聞いたからいいよね」
なるほど、里奈が小春の代わりに相原先生に声をかけたようだ。確かに院内で私の本当の退職理由を知っているのはこの三人と師長くらいだ。
「久保さんの送別会だっていうからきたのにこれっていわゆる女子会ですよね?! 僕、ここにいる必要あります?」
騙されたと言わんばかりの相原先生に今度は野原さんが釘を刺す。