サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

法務部と顧問弁護士に連絡を入れようとスマホを立ち上げた、その時。
不意に脳裏を過った人物が一人。

彩葉っ!!

今日は朝から一日講習だと聞いている。
実技講習だから、講習中は通信機器が使用不可だと言っていた。

電話をかけても当然のように留守番電話に切り替わり、メッセージを送っても既読にもならない。

彼女に説明しようにも混乱する今の状況で説明するのは、返って彼女を困らせてしまいそうだ。
当たり障りのないメッセージを入れておき、会社の対応にあたることにした。

**

十一時を回ると通告通り、情報番組のトップニュースで扱われている。
すると、ひっきりなしに問い合わせの電話が鳴り、開始数分で回線がパンク状態。

広報部と法務部と顧問弁護士、社長である父親と対処方針を決めながら、タブレットから流れるエンタメニュースを他人事のように観ていた。

「では、法的処置は早急に。広報は事実を確認中と」
「承知しました」
「はい」
「了解です」

法務部部長の美川、顧問弁護士の富永、広報部部長の秋山に社長が指示を出す。
三人は部屋を後にし、社長室に残ったのは秘書の酒井と本部長である郁の二人。

「心当たりはあるのか?」
「和久井という女性アナウンサーと、……という意味でしょうか?」
「あぁ」
「個人的には無いと言いたい所ですが、もしかしたら……と思うことがあります」
「どういう意味だ」
「婚約者がいる身で他の女性を口説くといったような意味合いでは『無い』と言い切れますが、別の角度で捉えたら、今回の記事が出る経緯になったと思われることは『ある』ということです」

財前は十日ほど前の対談日を思い出していた。

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