サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

遡ること十日前の十一月下旬。
年末年始向けのキャンペーン企画の最終打ち合わせに追われている中、某テレビ局で『近未来の航空業界』というテーマで対談インタビューが行われた。
日本サクラ航空の御園副社長と共に、ローコストキャリア(LCC)の航空会社が増える中で、どのようなビジョンを持っているのか?という、かなり踏み込んだ内容の対談。

戦略(手の内)をみすみす開示するわけにもいかず、御園副社長と牽制し合いながら、何とか無事に対談を終えた。
その後にインタビュアーの和久井アナウンサー、御園副社長とその秘書、俺と酒井の五人で会食をした。

その時に御園副社長から『婚約』の話を振られ、和久井アナウンサーのいる前で『婚約おめでとうございます』という流れになり、彩葉のことをその時に話したはずなのに。



御園副社長とは業界の会合でよく会うし、年齢が近いというのもあって、結構話しやすい方だ。
彼は三年ほど前に結婚し、翌年に第一子(男の子)が生まれている。

子煩悩の御園副社長から『女の子が生まれたら、是非うちの息子の嫁に』だなんて会話するほど。
幼い時から交流がある御園家の仕業だとは思えない。
例え、ライバル会社であっても……。

けれど、思い当たる節が無いとは言い切れない。
恐らく、あれが……原因だと思うのだが……。

「私の方で確認すべき事があります」
「株価が上がっているうちはまだいい。だが、このまま傍観は出来ないぞ」
「はい」

普段は大らかで口数が少ない父親だが、道理に合わないことには冷酷無比な態度を示す。
幼い頃から最大手の航空会社を率いる立場を弁え、厳格な両親に育てられたからだ。

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