サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)



「本部長、明日の十七時にエトワールホテルにてアポを取りました」
「ん」

これまでも、今回同様ゴシップ記事は何度となくあった。
だが、事前に通告があった時点でそれを差し止めしてしていた。

勿論、記事は全て事実無根。
大企業の御曹司という肩書を利用するような輩の餌食になってたまるか。
そんなことをして、株価を上げたいとは思わないし、会社の売り上げが伸びるとも思えない。

俺に近づいて来ようとする奴は大抵邪な欲を抱いてる奴ばかり。
そういった連中を寄せ付けないためにも、普段から近寄りがたい雰囲気をわざと醸し出している。



「遅くまで悪かったな。明日の出社は少し遅くても構わないから」
「大丈夫です、これが仕事ですから」
「……気を付けて帰れよ」
「はい、本部長も。お先に失礼します」
「お疲れ様」

酒井が退社し、腕時計に視線を落とすと、午前一時少し前。
結局、軽く日付を越えてしまった。

完全に放置していたスマホの電源を入れると、彩葉から留守電とメッセージが届いていた。

『緊急オペの要請が入ったので、今から行って来ます』という留守電。
『私は大丈夫ですので、会社の方の対応を最優先でして下さいね』というメッセージ。

他にも俺を心配するメッセージが幾つも入っていた。

留守電が入っていた時間は二十一時二十五分。
二十二時過ぎからオペを開始したとして、終わるのは朝方か。

彼女の顔を見て、ちゃんと謝罪したかったのに。
寝ずに彼女を待っていたとしても、きっと彼女の方が俺の話を聞く余裕が無いはず。

一日実技講習を受けて、帰宅してもゆっくり休むことなくオペに呼び出されたのだから。

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