サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
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都内でも有名なホテルのレストランの個室へと案内される財前と酒井。
深みのある青色のベルベットの絨毯。
ダークブラウンの木調に絨毯の色目より僅かに淡い青みがかったソファーチェアー。
ボタニカルな模様が施された白いテーブルクロス。
テーブルの中央に彩られたグラスブーケ。
シャンデリアが反射するほど綺麗に磨かれたカラトリー。
そんな空間に真っ赤なワンピースを着飾って待ち受ける人物を視界に捉え、財前は深呼吸した。
「本日はお忙しい中、お時間を作って頂きまして、有難うございます」
酒井が名刺を差し出し、財前に着席を促す。
財前は和久井と和久井のマネージャーに軽く会釈し、無言のまま腰を下ろした。
挨拶する間柄でもなく、謝罪するような真似をした覚えのない財前は、至って毅然な態度で。
ウエイターがグラスに水を注ぐ。
けれど、楽しく談笑するような雰囲気ではない。
どちらかと言えば、修羅場のような一触即発しそうなピリピリとした空気が張り詰める。
「本部長」
「……ん」
事前に酒井と打ち合わせして来た。
丁重に事を進めるのであれば、酒井や法務部に任せた方が手っ取り早い。
けれど、それでは財前の気が治まらないのだ。
「和久井さん」
「……はい」
「何故、貴女の相手が私なのでしょうか?」
「……何のことを仰ってるのか、分からないのですが……」
「ん~ん、……そうですか」
隣りに座る酒井へと手を出すと、そこに茶封筒が乗せられた。
その封筒から取り出したものを、和久井の前に並べる。
「こういう人がお好みのはずですけど?」
「っ……」
「あの日、たまたま私が通りがかっただけで、口封じしたいお気持ちは分かりますが、……いい迷惑です」