サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

あの日、対談インタビュー後に会食をし、自宅へと帰ろうとした財前は、酒井が車を回す間に化粧室へと席を立った。
既に御園副社長が会計を済ませてくれていることもあって、後は帰るだけという時。

化粧室から駐車場へと向かおうとした、その時。
『Staff only』と書かれた部屋から一人の女性が飛び出して来た。

ホテルスタッフの制服を着ているわけでもなく、私服と思われる服なのも違和感を覚えたが、それよりも目についたのは、飛び出して来た女性の格好だ。
ブラウスのボタンが外れ、胸元にキスマークや口紅の痕が幾つも付けられてる状態で財前の目の前を駆けて行った。

唖然としながら、その女性の後ろ姿を見ていた、次の瞬間。
横のスライドドアからもう一人の人物が出て来たのだ。
……その人物こそ、和久井沙雪。

乱れた口紅をハンカチで拭いながら出て来た彼女は、財前と目が合うと硬直した。

どういう経緯でこの流れになったのかは分からないが、他人に知られるのは困るだろうと思い、財前は素知らぬ顔をしてその場を後にしたのだ。

―――あれが、原因なのだとすれば、財前に落ち度は無い。
むしろ、被害者である。

財前が提示したのは、あの日、関係者立ち入り禁止になっている個室から出て来た女性との写真だ。
数年前から交際しているのだろう。
仲良く買い物や食事をする姿が目撃されている。

彼女がSNSにアップした画像日をチェックし、その日の防犯カメラから得た画像をプリントアウトしたものだ。

「貴女の交友関係に興味はありません。私には将来を約束した愛おしい人(ひと)がいますので」
「存じてます」
「では、何故、……このような真似を」

< 108 / 182 >

この作品をシェア

pagetop