サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
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「彩葉、大丈夫か?」
「……はい、何とか」
「顔色が悪いぞ」
「……睡眠不足と疲労ですかね」
「点滴打つか?」
「いえ、大丈夫です」
オペ前のCT検査の画像を確認していると、ホット珈琲がデスクに置かれた。
「明日のオペ、代わってやるからもう帰れ」
「大丈夫ですよ、先輩」
「体がどうのこうのじゃなくて、帰ってちゃんと話し合えって言ってんの」
「………」
「逃げても解決しないし、話し合わなくて納得できんのか?」
「………」
「お前の持ち味の猪突猛進はどこ行ったんだよっ、ホントお前らしくねぇな」
「っ……」
仕事でミスしたとかではないけれど、モチベーションは確実に低下している。
仕事とプライベートはしっかり区別してるから問題が起きているわけではないんだけど。
普段はにこにこと明るい性格の私だから、こんな風に落ち込んでると、患者さんにも伝わるようで。
『環先生、元気無いですね』
『何か、悩み事でもあるんですか?』
『体調が悪いの?』
だなんて、患者さんに気を遣わせちゃうほど、病んでいる。
医局の雰囲気もナーススーテーションの雰囲気も私が悪くしているようなものだ。
みんな私に気を遣って、普段はテレビからニュースとか情報番組が流れている談話室も、昨日今日と何もついてないくらいだから。
定時の十八時を回り、無理やり先輩に帰らされた。
『納得いくまで話し合え』と。
更衣室で私服に着替え、郁さんに仕事が終わったことを伝えようとスマホを立ち上げた、その時。
検索サイトのトップニュースに『御曹司との密会デート』と題して、新たな記事がアップされていた。