サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

けれど、会社の経営は別物だ。
彼の肩には何千、何万という人々の生活がかかっている。

「お話はもう宜しいでしょうか?のんびりと食事をする時間も惜しいので、失礼します」

脅したかったのかもしれないけれど、生憎、そんな小賢しい真似で動揺するような性格じゃないのよ。
他人にとやかく言われて別れるかどうかを決めるだなんて、ばかばかしい。
彼から別れを切り出されたって、すんなり受け入れるつもりはないのに。

悔しそうに顔を歪める彼女を尻目に、店を出た。

オフィス街に抜ける風があまりにも冷たくて、体がぶるっと震える。
スヌードをしているくらいじゃちっとも暖まらない。

「早く帰ろっ」

空車のタクシーを見つけて、それに乗り込んだ。



帰宅し熱めのシャワーを浴びて、気持ちの整理を図る。

頭では理解してるつもりでも、正直不安がないわけじゃない。
だって、どういった経緯なのかは分からないけれど、あの女性と郁さんに面識があるというのは事実だから。

パイロットとアナウンサー。
御曹司とアナウンサー。

どう考えても接点らしきものは見つからない。
一体、どこで知り合ったのだろうか?

もしかして、昔の彼女?
それとも元婚約者??

要らぬ想像が湧いては消え湧いては消えを繰り返す。

冷蔵庫内にある食材で簡単に親子丼を作ろうとご飯をセットし、玉ねぎと鶏肉をカットし終えた、その時。
カウンターの上に置いてあるスマホから、無機質な着信音が流れた。

病院からの呼び出しだ。

「はい、環です」
『すみません、先生っ。四一六号室の小田さんがショック症状に、今山田先生が対応してるんですけど、来て貰えませんか?環先生の患者さんですし、山田先生が環先生にと仰るもので』
「分かりました。今から出ます」
『すみません、よろしくお願いします』

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