サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
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「山田くんっ、腎機能障害があるから、造影CTはNGなの。大至急MRI検査して貰っていいかな」
「了解です」
「沢木さん、小田さんをMRI室に」
「はいっ」
大動脈破裂で先週手術をした小田健一(六十五歳)は、元々腎機能が低下していて、末期に程近い腎不全の患者である。
腎機能障害の患者には造影CTが負担となり、腎機能が悪化する恐れがあり、大動脈瘤の診断を下すには造影CTがベストだが、その検査ができないというリスク患者だ。
だが、3DエコーやMRIなど、他にも診断を下せる検査はある為、彩葉は別のアプローチを取ろうとしているのだ。
糖尿病も抱え、血管の状態がかなり悪く、心臓への負担も大きい。
更には、血液を綺麗にする臓器である腎臓の状態が悪く、全身に送り出す血液の状態が悪い。
要するに、綺麗な血液を作ることが出来ず、心臓から全身へ送り出す機能も低下しており、その血液が通る血管の状態も最悪といったケースだ。
どんな腕のいい医師でさえ、対応には限界がある。
けれど、苦しんでいる患者を目の前にして、弱音を吐くことは許されない。
「環先生、大丈夫ですか?顔色が悪そうですけど……」
「大丈夫よ、少し睡眠不足なだけだから」
山田医師が経食道心エコーの検査画像を見ながら、こめかみを押さえる彩葉を心配そうに見つめている。
「明日は十時から拡張型心筋症のオペが入ってましたよね」
「……ん」
「大丈夫ですか?呼び出しておいて、本当に申し訳ないんですけど……」
「大丈夫よっ、五日連続不眠なんてことしょっちゅうだし」
「それはそうかもですけど……」
「今は小田さんの原因を探らないと」
「そうですね」