サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

結局、硬化した血管が詰まり、その部分に圧がかかったことで瘤ができ、それが破裂したようだ。
幸いにも人工血管置換術が成功し、容体は安定した。

午前八時少し前。
医局のソファーで仮眠中の彩葉にふわっと毛布が掛けられた。

「んっ……」
「嫁入り前の娘が外泊か?」
「……先輩」

壁掛け時計で時間を確認して、両手を突き上げ伸びをする。

「四一六号室の小田さんの容体が急変して、人工血管置換術をしたんです」
「小田さんかぁ……。腎機能も末期寸前だし、トンネル工事(血管の詰まり改善)しないとシャント(人工透析用の血管)も無理だろ」
「そうなんですよね。既に心臓周辺は硬化気味ですし、恐らく手首にシャント作っても血液が流れないかと……」

慢性腎不全(腎機能の末期状態)になると、人工腎臓(人工透析)が必要になる。
心臓から離れている静脈と動脈を繋ぎ合わせるのがベストで、体内から大量の血液を抜き出す必要がある。
通常の血管では一度の大量の血液を抜き取ることが出来ないため、これをシャントと呼ばれる血管にして透析を行うのだ。

通常腎臓に関しては、泌尿器科が担当するが、他にも疾患がある場合、よりリスクの高い疾患を対応する科で基本診ている。

小田さんの場合、心臓、腎臓の他にも幾つも疾患を抱えていて、先週から胸部外科病棟に入院している。
急変に陥るリスクも高いため、ナースステーションのすぐ隣の病室だ。

「今日、DCM入ってたよな」
「はい」
「代わってやろうか」
「大丈夫ですよ、先輩だって午後から僧帽弁狭窄症(MS)のオペ入ってるじゃないですか」
「けど、お前、死相が出てんぞ」
「死相って……」

ここ数日まともに寝れてないから、限界に近いのは確かだ。

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