サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
エレベーターに乗り込み、深呼吸した。
密室だから、他の誰かに聞かれることもない。
「あの……、郁さんの立場が悪くなってるんですか?」
こういうことは遠回しで聞いても埒があかない。
私に解決できることなんて限られているのだから。
『現在下がり続けている株価は、直に持ち直すと思いますが……』
「他に何かあるんですね?」
『少し前から専務にという話が出ていたのですが、恐らくそれは延期になりそうです』
「……そうですか」
『今はそうならないように、あらゆる手立てを講じてますので』
「私に出来ることはありますか?」
『リカバリーの期日が二週間後なので、それまでの間はご帰宅が遅くなるかと思います』
「……分かりました。私も年末で緊急オペが多くなるので、私のことは心配要らないとお伝え下さい」
『ご心配お掛けし、申し訳ありません。環先生にご迷惑がかからないように最善を尽くしますので』
「私は本当に大丈夫ですからっ。郁さんの体調を気遣ってあげて下さい。彼の事を宜しくお願いします」
エレベーターから下りた、その時。
再び血の気がサーっと引くような感覚に襲われ、無意識に壁に手をついていた。
しかも、子宮が収縮するようなしくしくとした痛みが走る。
どうしたんだろう?
私の体。
そういえば、そろそろ生理が来てもおかしくない。
不規則な生活と疲労蓄積により、元々生理不順なうえ、生理痛も重い方だ。
家に帰ってゆっくり休もう。
不意に襲われた痛みのせいで鼓動が乱れる。
鼻から息を吸って口から細く長く息を吐き、呼吸を整える。
鼓動が落ち着き始めたのを機に歩き出す。
報道陣が待機しているかもしれないと思い、正面玄関でも通用口でもない特別棟の通用口へと向かっていた、その時。
再びくらっと眩暈に襲われ、血の気がサーっと引く感覚に襲われた。