サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)



「気が付きましたか?」
「……ここは?」

嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔を掠め瞼を押し上げると、何故か病室のベッドの上に横たわっていた。

「……久我先生」
「大丈夫ですよ。……父から話は聞いてますので」
「……すみません、ご迷惑をお掛けして」

点滴のクレンメを調節している彼は、脳神経外科医の久我 柾(三十歳)。
病院長の息子で、三年前に検事から医師に転職したという異色の経歴の持ち主だ。

司法試験を最年少で合格したという秀才で、医大も首席で卒業したという逸材。
将来、病院長の跡を継ぐ人物だ。

クールな眼差しと容赦ない物言いがカリスマ性を生んでいるようで、(アイス)王子と呼ばれている。
葛城先輩と久我医師はうちの大学病院の二大イケメン医師だ。

「特別棟へと繋がる通路で倒れていたので」
「……お手数お掛けしました」
「疲労と心労が重なっているのは分かりますが、ご自身の体をもっと大事にして下さい」
「……すみません、医師なのに情けないですね」
「そんなこと無いですよ」

普段は笑顔など見せない彼が、ほんの少し笑みを零した。
私を気遣ってくれているようだ。

「暫く安静にしないとならないのですが、私の方から部長に話しましょうか?」
「自宅に帰って少し休めば大丈夫ですっ」
「えっ?……何を……仰ってるんですか?」
「え?」
「もしかして、ご存じないのですか?」
「??……何を……ですか?」
「環先生は……――…なんですよ?」
「………ご冗談はやめて「冗談なんかではないですよ」
「………へ」

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