サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
*
「潤くん、後は私がするから」
「ん」
葛城は自宅に彩葉を連れ帰った。
妻である葵に事情を説明し、ゲストルームに彩葉を通し、処方された輸液を点滴する。
葵は自身の服を彩葉に貸し、彩葉はそれに着替えて……。
医師だから、言わなくても分かることがある。
苦楽を共にした仲間(先輩)だから、言わなくても通じることがある。
自宅に帰れず、実家にも帰れず、病院にもいられず。
行く当てのない彩葉を引き取るのが一番だと考えた葛城。
疲れ切ったのか、安心したのか。
彩葉は青白いまま、眠りに就いた。
*
「彩葉の様子は?」
「大丈夫なふりしてるけど……」
葵は顔を横に振った。
「暫く安静にしないとならないから、彩葉のこと、頼むな」
「うん、分かってるわ」
「財前さんに知らせた方がいいんだろうけど、今大変な時期だし……」
「家に帰らなかったら連絡して来るでしょ」
「……そうだな」
連絡先を知らないわけじゃない。
どんなに忙しくても、自身の恋人のことなのだから、電話くらい出来ると思うけれど。
正直、医師として伝えるべきか、知人として伝えるべきか、悩ましい所だ。
しかも、本人の許可なく、安易に伝えていい事でもない。
「点滴や薬を服用したら、大丈夫なんでしょ?」
「……分からない。専門外だし、詳しい検査結果を診たわけじゃないし。だが、彩葉の口ぶりからすると、かなり危険な状態のような気がする」
「うそっ……」
自宅マンションへと向かう道中で、彩葉から事情を聞いた葛城。
ある程度の状態は把握しているものの、専門外ということもあって、詳しいことは病院に行かないと分からない。
葵は夫の言葉に驚き、両手で口元を覆った。