サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「酒井」
「はい、本部長」
「悪いが、俺がこのホテルにいたという証拠を消しといてくれ。それと、この部屋のも」
「既に手配済みです」
「フッ、……さすがだな」
「この後は如何されますか?」
「社に戻る。明日の会見内容を最終チェックをしておかないとな」
「承知しました。では、会場の最終確認は私の方でしておきます」
「頼む」
ベルベット状の絨毯床をコツコツと小気味いい音を立てながら歩く財前の背中を、酒井は安堵の溜息を溢しながら見つめた。
室内から漏れて来た殴打音のような破壊音のような音を耳にした酒井。
事前にこういうことも予想していて、既に処理班を手配済みなのだ。
室内で起こったであろう事柄に関して確認せずとも手に取るように分かる酒井は、この程度で済むのであれば……と胸を撫で下ろす。
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「なっ……何なの……」
シャンパングラスを持つ手の震えが止まらない。
掴みどころのない人だとは思ってたけど、あんなにアブナイ系の人だったなんて……。
目の前に突き刺さったナイフを目にして、心臓が爆発したかと思った。
こんな感情を抱いたのは初めて。
「頼む相手を間違った……?」
無意識に漏れ出す声。
グラスの水を浴びせるとか、テーブルの上を手で払うとかなら予想も出来る。
けれど、ナイフを思い切り振り下ろして、高級皿を突き破ってテーブルにナイフを突き刺すだなんて、聞いたことない。
一瞬夢だったのかな?だなんて、淡い期待をした、その時。
視界に映ったのは、シャンパングラスの中に浸る録音機。
「あっ、……残しておこうっ」
テーブルの上のスマホを手にした、次の瞬間。
ピンポーンッ、……ピンポーンッ。
「誰かしら?」