サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
普段テレビに映る仕事をしていても、こういった話題でトップニュースに出るのは初めてだ。
しかも、生中継だと聞かされ、どうにもこうにも不安に駆られる。
バッグからコスメポーチを手に取り、中からファンデーションのコンパクトを取り出す。
メイクが崩れてないか、何度も顔を横に振って確認する。
髪形を確認し、笑顔の練習を何度もして……。
「大丈夫、……微笑んで、彼を見ていればいいと言われたじゃない」
秘書からのメッセージにあった事を反芻するように自分自身に言い聞かせる。
アイス珈琲に口を付けて、騒ぐ鼓動を静めていた、その時。
カチャッ。
ダークグレーの三つ揃えのスーツを身に纏った財前が現れた。
カツカツと小気味いい靴音を響かせ大きなストライドで優雅に歩く様は、自信に満ち溢れた男の象徴のようなもので、不覚にも見惚れてしまった。
しっかりしないと。
視線を逸らして、深呼吸する。
「緊張してるのか?」
「え?」
「ニ十点だぞ」
「……ッ?!」
顔の前に手のひらを翳し、それを大きく上下に振った。
数日前にも同じことをされた。
『完璧な仮面をつけて来い』と言われた時と全く同じ。
ニ十点って……。
バイブレーションでの着信があったようで、スラックスのポケットからスマホを取り出した。
「はい。……ん、………分かった」
かりそめの関係だとしても、一応婚約者ということになる彼。
あの日以来、少し、いやだいぶ恐怖心が植え付けられてしまったけれど。
こうして黙っていたら、完璧なハイスぺ男だ。
見た目は勿論のこと、家柄、職業、そして財力や世間への影響力も。