サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
サイドテーブルの上にあるノートパソコンを手に取り、電源を入れる。
「テレビを立ち上げたらいいんですか?」
「……うん」
困惑の表情の彼女を視界に捉えたまま、テレビを立ち上げた、次の瞬間。
「ッ?!!」
「何かの間違いだと思うんだけど……、彩葉ちゃん、……大丈夫?」
「………」
ノートパソコンのモニターに映ったのは、『和久井 沙雪さん♡ASJの御曹司、婚約記者会見』とテロップが出ている。
しかも、取材班が会見場にスタンバイしているようで、各局どこも生中継をするらしい。
皇室行事の生中継だとか、プロ野球のヒーローインタビューだとか。
大物芸能人の結婚会見などでよく目にするLive配信だ。
ホテルの宴会場にセッティングされた会見場は、雛壇と言われる一段高くなったステージ場に、背景になる部分に金屏風のような豪華な衝立と白いテーブルクロスのかけられた机に色鮮やかな花々が生けられている。
どの局も夕方のニュース番組の中で特別枠を使って放送するようで、『今日は予定を変更して』と繰り返している。
「彩葉ちゃん……」
「……あっ、平気ですよ」
葵さんに心配をかけまいと、気丈に振る舞う。
だって、仕方ない。
婚約指輪を彼に返してしまったんだから。
今さらどうこう言える立場にない。
分かりきった事なのに……。
悲しくて、切なくて……、涙が止まらない。
堰を切ったように溢れ出す涙。
我慢しようとすればするほど、喉の奥から嗚咽が漏れ出る。
「……うっ……う゛ぅっ……んっ……ハッんっ…」
とめどなく溢れ出す涙を拭いたいのに手が震えて上手く拭えない。
私は背中を優しく摩る葵さんの胸に縋り付いた。