サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

愛されていると思い込んでいた。
私だけが特別なんだと信じ込んでいた。

例え、私が彼の前から姿を消したとしても。
きっと待っていてくれる。
迎えに来てくれると思っていたのに……。

まさか、たった一週間でこんなことになるだなんて、思いもしなかった。

ご両親から一日も早くに、と催促はされていた。
彼からも籍だけでも先に、と何度も言われ続けていたのに。

それを軽く受け止めていたのは、私だ。

財前という財閥とも言える家柄の跡取りの結婚。
先延ばしにできないはずなのに、勝手に『平気』だと思い込んでいたのは、私だ。

常に自分の仕事を優先してきたつけが、今になって回って来た。
けれど、自業自得だから文句も愚痴も言えない。
甘んじて受け入れる以外に術はない。

郁さんからのメッセージも留守電も無視したのは自分なのに。
自己中で彼の気持ちを無視した罰なのに。

それでも、愛されていると勘違いしていた。
言葉に言い表せないくらい、おごりがあった。

今さら、どうにもできないのに……。

「うっ……」
「大丈夫?」
「……はい」

頭がくらくらする。
胸が苦しい。
呼吸がしづらい。
吐気までして来た。

「あっ、もしもし?潤くん?」
『葵?今、オペ終わったとこなんだけど、彩葉の様子は?』
「うん、……今、かなり蒼ざめてる」
『テレビ観たのか……』
「……うん」
『子供の迎えはお義母さんに頼んだから、彩葉の傍についてやっててくれ』
「うん、分かった」
『彩葉に何かあったら、直ぐに連絡して。なるべく早くに帰るから』
「はい」

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