サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「和久井さん?」
「っ……」
もうっ、何なのっ?!
完全に騙されたんじゃない!!
ドアの内側にいる財前の秘書が、無理やり司会者席へと促す始末。
……生中継だった。
そうだ、今日は記者会見が生中継される予定だった。
一体、どうなってるの??
尚もフラッシュがたかれ、目が痛むほど鋭い閃光が走る。
視界にある中では、出口は自分の背後のドアと報道陣の横と後ろにあるだけだ。
反対側のドアの前には生花とテーブルで塞がれている。
完全にハメられた。
もう、お手上げじゃない。
『あまり深く知ろうとすると、身を滅ぼしますよ』
男に言われた言葉を思い出した。
完全に頼む相手を間違ったらしい。
こんな危険な男を敵に回してしまっただなんて。
欲を掻くとろくなことがないというけれど、本当だ。
昔読んだ本にもあったな。
誰かを陥れようとすれば、何倍にもなって自身に返って来ると。
後悔してももう遅い。
いつもはカメラの向こうの視聴者が自分の味方だったのに。
今はカメラの向こう側だけでなく、この会場にいる全ての人も敵だということだ。
血の気が引く。
背筋が凍る。
足の感覚がない。
なのに、数歩先に進まねばならない。
感覚の無い足で司会者席へと移動し、用意されている資料に釘付けになった。
何、これ……。
あの男、頭おかしいんじゃないの?
イカれてる。
完全にキチガイもいいところだ。
鬼畜?サイコ??
完全にヤバい系の人じゃない!!
どこから現れたのか、ホテルスタッフがマイクの高さを調節し始め、手のひらをそっと向けて来た。
準備万端だと言いたいらしい。
知ってるわよ、それくらい。
これを生業にして来てるんだから!
深呼吸して、出来る限りの笑顔を張り付けた。
「大変長らくお待たせ致しました。それでは……――…」