サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
十一月二十六日と左下の日付が視界に入る。
再び元職場の入口を映す防犯カメラの画像には、すっかり見慣れた壁に凭れる彼の様子が。
ジャケットの袖口から覗く腕時計で時間を確認している。
いつ見てもイケメンすぎる。
長い脚を軽く交差させて、時折、軽くアレンジされた髪を指先で抓んだりして。
遅番勤務の私は、慣れた手付きで入口ドアを施錠し、彼と共にモニターの範囲外に消えた、次の瞬間。
展望デッキの画像に切り替わり、数分前の画像と重なったように見えた。
彼と二度目の展望デッキに行った、あの日。
今でも忘れもしない、あの日だ。
何枚か前の画像は、香港でのラブラブな雰囲気の二人だったのに。
今目の前に映る私達には笑顔の欠片すらない。
音声が無いから伝わり辛いかもしれない。
だけど、無きじゃくる私はしっかりと防犯カメラに収められていた。
手の甲で涙を拭い、肩が小刻みに震えている。
彼が私の目の前に歩み寄る。
そして、頬を伝う涙を優しく拭って。
大きな手が頭に乗せられ、その指先はゆっくりと降下して纏めていたヘアクリップが彼の手によって取られた。
風に靡く私の髪を彼は優しく何度も撫でて……。
そして、―――――そっと髪に口づけた。
彼が私に別れを告げた日だ。
『もう、視界の三分の一くらいは見えてないんだ』
『立場上、やらなくちゃならないことは山ほどあるから。だから、視力が残っているうちに、やれることはやっておきたい』
彼はそう告げて、私に縋り付く隙さえ与えてくれなかった。
あの日、あの時。
私は彼の背中を押すことしか出来なかった。
彼が望んでいることを応援するしか……。