サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

十二月九日。
薄暗い画像なのに、すっかり記憶されたその場所は、第三ターミナルの展望デッキだ。

定点カメラに映るのは、ベンチに腰掛けた着込んでいる私だ。
ロングコートに厚めのマフラーをして。
コートのポケットに手を入れ、肩をすぼめてフェンスの奥をじっと見つめている。

そんな私の元に彼は現れた。
彼の登場で立ち上がった私は、鞄の中からあのノートを取り出し、差し出した。

昨日のことのように思い出す。
だって、彼のために何日も寝ずに作ったのだから。
点字は専門外だから、一から覚えてそれを形にするのに時間が足りなくて。
ありとあらゆる時間を費やして、二週間で一冊のノートに仕上げたのだから。

別れていても、心のどこかで繋がっていると思っていたあの時。
だけど、あの日を境に、自分で彼に完全に別れを告げたんだった。

泣きながら彼に訴えている画像。
音声が無いのが有難い。
だって、彼との大事な会話を第三者に聞かれたくないもの。

本当なら、こういう画像ですら見られたくないのに。

泣きじゃくる私を優しく抱き締める彼の後ろ姿。
黒いロングコートにすっぽり隠れた私。
あの日の彼のぬくもりと匂いは今も忘れてない。

「うぅっ……何なの~ぉっ!もうっ、涙が止まらないじゃないっ」
「……葵さん」

涙を流しているのは、私だけじゃなかった。
隣りにいる葵さんも、手で涙を拭ってる。

もう片方の手は、私の背中を優しく撫でて。

一人で観ていたらたぶん辛すぎたかも。
思い出すのも感傷に浸るのも。

想い出って、良いことだけじゃないもの……。

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