サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
再び会場内に流れる優しいピアノのメロディー。
映し出されたのは、薄暗い海の画像。
定点カメラの画像が上手く繋ぎ合わせられていて、三百六十度海に囲まれた画像だ。
もしかして、……いや、まさかね。
涙で歪む視界の中で、必死にパソコンのモニターを観ようと目を見開いて。
口から心臓が出そうなほど、緊張が走る。
「っ……」
「……素敵ね」
海原の奥に羽田空港の灯りが見える。
白い閃光のストロボライトが、ランウェイから飛び立つ機体を知らせている。
徐々に機首を上げ上空に飛び立つ様を背景に収め、見つめ合いながら話をしている二人。
勿論、私と郁さんだ。
そして、お決まりのように泣き崩れる私を彼は長い腕で抱き締めた。
だって、この時。
私は生まれて初めての『プロポーズ』を待っていた。
なのに、彼はいつになっても言ってくれなくて。
機長の昇格試験に合格したら、プロポーズすると断言してたのに。
一向に言おうとしない彼にキレた時の画像だ。
そして……。
この後の光景を勿論知っている。
だって、あの瞬間を忘れる人なんているのだろうか。
例え、幾月もの月日が流れたとしても、あの瞬間は絶対忘れることが出来ないと思う。
私の左手薬指におさまっている有名ブランドの指輪を外し、彼は新たに指輪を同じ場所に嵌めた。
音声は無い。
けれど、あの日の彼の言葉は、胸に焼き付いている。
『俺のこの先の人生に彩りを添えて下さい』
ほんの少しだけ照れながら優しく微笑む彼が視界いっぱいに映って。