サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

「海ほたるでプロポーズされたんだねぇ~♪財前さんって、ロマンチストさんなんだねぇ~」
「っ……」

ヤバい。
これって、全国放送だよ。
しかも、生放送じゃない!!

二人だけの想い出なのに、何故これを流してんの?!

「素敵ねぇ~、こんなにも愛されてて」
「っ……」

何でも話せる葵さんですら、顔が見れないほど恥ずかしい。
二度と職場に戻れないかも……恥ずかし過ぎて……。

会場からもヒューヒューと冷やかすようなはやし立てる声が漏れて来る。
報道陣に囲まれているのに、彼は顔色一つ変えずに座ったままだ。

ワイプに映る彼は会見開始の時と変わらず、ポーカーフェイスのような別人のような表情だ。
肝が据わっているという域を軽く飛び越え、ここまで来ると俳優顔負けの演技のように感じてしまう。

普段の彼からは想像もできないこの経緯。
騒ぐようなことも目立つようなことも嫌う彼なのに。
何故全国生放送をしてまで、私との過去をあからさまにするのだろう?

ワイプの中の彼を見つめていた、その時。

「わぁっ!彩葉ちゃんの振り袖姿だぁ~」
「へ?……っ?!!」

嫌だやだっ、まさか、これも流すつもりなの?!!

七月三日、蒼天が眩しい夏の日。
曲線を描いた白洲石に二三崩しの飛石が置かれている上を心許なくゆっくりとした足取りで進む振り袖姿の私だ。

成人式には医大のセミナーが翌日に控えて出席出来なかった私。
名古屋と東京を行き来するのを断念し、学生生活に全てを捧げ、前撮りで写真を撮っただけだった。
レンタルで借りた振袖を着て、成人の記念にと写真だけは残したけれど。
だから、結納にかける親の愛情は手に取るように分かる。

人間国宝の本手描きの京友禅で仕立てられたもの。
あの日にたった一度だけ着た、振袖だ。

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