サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

彼とのやり取りが走馬灯のように蘇る。
あの時の彼の瞳は、本当に優しくて。
一瞬でも白紙に戻そうと考えたことさえ、いけないことなんだと思い知らされるほどだった。

『こんな俺と将来を約束してくれて』『大事にするから』

少し低めで蕩けるような甘美の声。
テレビモニターからはピアノのメロディーしか聴こえて来ないのに、あの日の彼の声が伝わって来るようで。

再び頬に涙が伝う。
だって、私の額に口づけをした彼の表情が、本当に嬉しそうで。
あの時は恥ずかしくてぎゅっと目を瞑ってしまったから見逃していた。
彼があんな表情を私に向けてくれていただなんて……。

「……終わり?」

葵さんの声が耳に届くのと同時に、テレビモニターから流れて来るメロディーも変わった。
そして、画像の代わりに現れたのは……。

『ご婚約、おめでとうございます。先生、覚えていますか?あの日、空港で破水した私を迅速かつ的確な処置で対応して下さり、本当にありがとうございました。先生のお陰で、今はこうして可愛い双子のママになれました。先生は私と子供二人の恩人です。どうかお幸せに』

「っ……」

モニターに映し出されたのは多胎児を身籠っていた彼女と、無事に出産された双子のお子さんだ。
あの時はお腹の中にいた双子が、すっかり大きくなって。カメラに向かって愛らしい笑顔で手を振っている。

「彩葉ちゃんが助けた命なんだね~」
「………はい」

こんな感動を味わうだなんて、思ってもみなかった。

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