サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

次にモニターに映し出されたのは……。

『こんにちは。……覚えているかしら?同じ日に同じ飛行機の、たまたま隣りの席に居合わせただけの縁なのに。今でも鮮明に覚えてます。私ずっと不妊治療してんですが、あの日の午前中にダメだったと治療結果を聞かされていて。本当に人生のどん底にいた瞬間だったんだけど。あの機長さんのサプライズアナウンスと、副機長さんの温かいメッセージと。それと、隣りに座る貴女の眩い涙と笑顔が忘れられなくて。もう少し治療を頑張ろうと思えた瞬間なんです。香港にいる主人の元に向かう便で、貴女と副機長の財前さんから勇気を貰いました。あれから二年近くかかってしまったけれど、今こうして毎日幸せを噛み締めてます。あの日、私にエールを送ってくれて、本当にありがとう。ご婚約、おめでとうございます。どうぞお幸せに~』

副操縦士として彼が復帰したあの日。
隣りの席に座っていた、あの女性だ。
ポケットティッシュをそっと差し出してくれ、何度も温かい言葉をかけてくれた。

そんな彼女が今、モニターに大きなお腹を愛おしそうに撫でながら映っている。

私は何もしていないのに。
エールを送ったのは、私でなくて……郁さんと大槻機長なのに。

彼が手術を決断するきっかけは私だったかもしれないけれど。
こんなにも、誰かの人生に深くかかわっていただなんて……。

会見場のスクリーンに表示されたのは、『祝・婚約 財前 郁♡環 彩葉』と書かれたテロップ。

ワイプに収まっていた彼が、モニターにアップに映し出された。
何、これ。
……私、一般人なんだけど。

「彩葉ちゃん」
「っ……」
「よかったね♪……財前さん、全国ネットで宣言してくれたんじゃない」
「っっっ~っ」

サイコすぎる。
普通、こんな事しないでしょ。

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