サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

二年も前の防犯カメラの映像。
空港内だけでなく、彼があちこちから画像を取り寄せ、編集してくれたのが伝わって来た。
それが、どれほど大変だったのか……想像も出来ないほどに。

「本日の婚約会見は以上となります。お忙しい中、お越し頂きまして有難うございました」

異様な雰囲気を打ち破るかのような彼女の声。

『質疑応答は無し』と冒頭で伝えてあっても、次々と向けられる質問とフラッシュの嵐。
その矛先が向けられている彼は、至ってクールな表情だ。

約十秒くらいの間を置き、彼はスッと立ち上がり、深々とお辞儀をした。
再び顔を上げた彼の表情は、私の知っている彼。
完全に仕事モードの彼がモニターいっぱいに映し出された。

「本日はお忙しい中、お集まり頂きまして、誠に有難うございます。全国の皆様にASJよりささやかな贈り物をご用意致しました。それがこちらになります」

再びスクリーンにカメラが切り替わる。
そこに表示されたのは、『ブライダルキャンペーン』と題されたもの。

来年一月一日から八月三十一日までの搭乗予定の航空券の割引。
提携旅行代理店のウェディングパッケージプランによる割引航空券のセット。
来年一月一日から十二月三十一日内に入籍した証明書を持参したカップルに、航空券の割引券又は空港内のショップで使用できるギフト券。

「詳しくは当社ホームページをご覧下さい」

再び深々とお辞儀した彼は、優雅な足取りで会見場を後にした。
そして、彼の退場と共にスクリーンに再び何かが映し出された。

十一月二十八日と表示された画像。
高級レストランの通路のような場所を映す、防犯カメラの映像のようだ。

画面手前から奥へと歩く人物は、シルエットですぐに分かる……郁さんだ。
そして、【化粧室】と書かれたドアへと向かう彼が足を止めた、その時。

衣服が乱れた女性らしき人が横の扉から飛び出して来た。
軽くモザイクがかかっているその女性らしき人と一瞬だけ顔を合わせたような感じで。
そして、その後すぐに再び同じドアから出て来たのは……和久井 沙雪さんだ。
ハンカチで口元を必死に拭いながら、数秒彼と顔を見合わせ、彼女は罰が悪そうにその場を立ち去った。

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