サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
『はい、酒井です』
「悪いな、忙しいところ」
『いえ、もう終わりましたので大丈夫です』
記者会見の会場の後片付けの指示やら、報道陣の対応を酒井に丸投げしていた。
『如何されました?』
「彩葉の居場所が分かった。今から迎えに行くんだが、医療スタッフと身の回りの世話をするスタッフを今すぐ自宅に手配できるか?」
『了解です。直ぐに手配します』
「悪いな」
『本部長』
「ん?」
『もう手放さないで下さいよ?』
「フッ、言われなくとも……」
『では、早急にご自宅に手配しておきます』
「頼む」
郁はエンジンをかけ、車を発進させた。
*
『葛城』と記された表札の家。
郁は深呼吸して、その家のインターフォンを押した。
「はい」
「夜分に申し訳ありません。……財前です」
「こんばんは。どうぞ中に入って来て下さい」
「失礼します」
門塀を開け、インターロッキングを歩み進める。
玄関に視線を向けた、次の瞬間。
カチャッという音と共に観音開きタイプの右ドアがゆっくりと開いた。
「いらっしゃい」
「こんばんは、お邪魔します」
「どうぞ上がって下さい。……彩葉ちゃん、ゲストルームにいますから」
「……有難うございます」
何度か顔を合わせたことのある葛城医師の奥さん。
彩葉と同じ料理教室に通う彼女は、彩葉の友人でもある。
酒井に準備させておいた手土産を手渡し、彼女の後を追う。
案内されたゲストルームのドアの前。
葛城医師の奥さんは、会釈しリビングの方へと気を遣ってくれたようだ。
フ~ン、……フゥ~。
気持ちの整理を図り、深呼吸して、ドアを三回ノックした。
「はい」
ドアの奥から聞こえて来たのは、紛れもなく彼女の声だ。
十日ぶりに聞いた彼女の声は少し弱々しく、掠れた感じがした。