サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
「彩葉」
「ッ?!!……郁さんっ、………どうして、ここに?」
ゲストルームのドアをノックしたのは葵さんでは無かった。
三十分ほど前にパソコンのモニターで観たのと同じスーツ姿で現れた、郁さんだ。
「迎えに来た」
「っ……」
優しい瞳の奥が、少し切なそうな色を滲ませて。
点滴針が刺さる手をそっと持ち上げ、その手に彼の手が重ねられた。
「何も心配しなくていい。けじめはつけて来たし、一分一秒たりとも彩葉と離れていたくない」
「っ……」
「俺の元に戻って来てくれるか?」
「………」
いいのかな……。
こんな私でも。
あんな全国放送されてしまったからには、外も普通に歩けないかもしれないけれど。
あの後にASJのホームページに寄せられたコメントは、祝福の嵐になっていて。
『素敵!』『感動した』『私も幸せになりたい』『ご婚約おめでとうございます』『お幸せに~』
彼のイカれた発想だからこそ、迎えた結末だと思えて。
下落していた株価は一気に急上昇し、現在ASJのホームページはサーバーダウンしている。
それほどまでに国民が反応を示した記者会見。
彼の勇気があってこそだ。
「会見、観ました」
「……フッ、そうか」
「一人にさせてごめんなさい」
「俺の方こそ、一般人の彩葉を表立たせてすまない」
申し訳なさそうに眉根を寄せた彼。
苦渋の決断だったのかもしれない。
和久井 沙雪さんとのスクープに対応するには……。
「郁さんに言わなくちゃいけないことがあるんです」
「ん?……体調のことか?」
「……はい」
「今、自宅に医療スタッフを手配してるから、心配しなくていい。俺に隠れて治療するんじゃなくて、俺の傍で治療したらいいから」
「それなんですけど……」
「……ん?」
重ねられている彼の手をもう片方の手で包み込んだ。