サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

CBは強い上昇気流で、時には成層圏まで発達する雲もある。
着陸態勢を取っている機体は空港へと向かう為に高度を下げ続けているのに、その気流で上へと押し上げられる。

航空機は自動車のように赤信号で停止出来るわけではない。
常にエンジン出力を維持したりして浮力を得て、機体の高度を保たなければ墜落してしまう。

CBを避けながら飛行し続けたASJ322の機体は、基本ルートではない方向へと飛行せざるを得なかった。
既に房総半島を縦断する形で北上し、幕張の上空辺りまで進んでいる。

悪天候のデパート(積乱雲(CB))を回避し、その周辺にある幾つものCBを出来るだけ避けながら、およそ十分間の回避操縦をこなした財前は大きく息を吐いた。

本来なら大島上空を通過し、房総の白浜、富津、木更津、海ほたるの順に上空を通過し、羽田空港の南側から着陸する。

この日の羽田空港の風向きは南風。
既に幕張上空を通過中の機体は、お台場上空を抜け、羽田空港の北側からアプローチすることになった。

着陸時は必ず向かい風を受けなければならない。
これは操縦の基本中の基本で、追い風で着陸してしまうと、着陸に必要な滑走距離が大幅に伸び、指定された滑走路内での着陸が困難になる。

稀に着陸直前は向かい風だったのに、いざ着陸を試みたところ追い風に切り替わり、滑走路距離が足りなくて離陸滑走し再び上昇(タッチ・アンド・ゴー)を余儀なくされ、再びタワーへ着陸の許可を得ることもある。

混雑する時間帯。
財前が操縦するASJ322の機体だけではない。
数珠つなぎ状態で、航空機は指示によるルートを一方通行に飛行している。
更には羽田空港から離陸する航空機もあり、着陸を何度もトライ出来るほどの余裕はない。

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