サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
財前は、ランディングギアが接地したと同時にエンジンの逆噴射装置を作動させる。
進行方向とは逆に噴射されているジェット気流を止め、進行方向へジェット気流を変換させることで制動力を得るのだ。
オートランディングのお陰で、パイロットはエンジンの逆推力の出力コントールと逆噴射する方向に専念出来る。
とはいえ、その微調整(タイミングと操作スピード)はパイロットの操縦技量で大きく左右される。
着陸時に機体が大きく揺れるのは、この操縦がアンバランス且つ雑だということだ。
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「財前機長、お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「今日のCB対応、凄く勉強になりました」
副操縦士の奥菜はフライト後のデブリーフィングで、普段できない貴重な体験を思い出し、高揚感に浸る。
フライト後のデブリーフィングは、主に反省点を振り返り、機長からアドバイスを受けるのが基本。
だが、デブリーフィングの終わりに、こうして感想を述べることもある。
「それと、噂に聞く着陸の神技。あれは本当に神の域ですっ!またフライト、ご一緒して下さいっ」
「フフッ、……今日のあれは偶々だ」
財前がASJで一目置かれているのは、御曹司だからではない。
パイロットの操縦技量を示す『着陸時の操作』が、パイロットの中でも群を抜いて秀でているからだ。
「今日はかなりハードなフライトだったから、ゆっくり休んで」
「有難うございます。財前キャプテンも」
「……っ……コホッ」
奥菜はわざとらしく自身の首を指でなぞった。
……財前の首にマーキングされた赤い華。
半日前に恋人の彩葉が寝ぼけて付けたキスマークのことを言っているのだ理解した財前は、軽く咳払いした。