サイコな機長の偏愛生活



二十時過ぎに彩葉が自宅に到着すると、既に財前が帰宅していた。

「おかえり」
「ただいま~、今日は早かったんですねっ」
「ん、定期検診の日だったから」
「えっ?じゃあ、病院に来てたんですか?」
「ん」
「何で連絡してくれないんですかっ!」
「何でって、別に逢う約束してなかっただろ」
「逢う約束してなくても……、……るなら……ったのに」
「フッ、……悪かったな」

彩葉が言わんとすることが分かるだけに、財前は笑みが零れた。
はっきりと言えなくても、態度で分かるから。

もっとズバッと言ったっていいのに。
好きな女からなら、ブーブー文句を言われても可愛いと思ってしまう。

「冷蔵庫にあるやつ温めるから、シャワー浴びておいで」
「………はい」

ぷくっと膨れる彩葉が可愛くて仕方ない。
思わず抱き締めたい衝動をぐっと堪えて、彼女の背中を押す。

「腹減ってるから早くしろ」
「っ……、はい、分かりましたっ!」

踵を返した彼女の、形のいいお尻がほどよく揺れる。
スキニーデニム姿の彼女の後ろ姿を捉え、首筋にあるほくろが視界に入った。

「いい女すぎるだろ」



就寝するためにベッドへと潜り込んだ二人。

「新しい医師、結構背が高いんだな」
「え?……彼を見たんですか?」
「ん」
「ん?……殆ど、彼とずっと一緒にいましたけど、どこで見ました?」
「………」
「眼科だと南棟だし、本館に来るのは会計の時くらいですよね?」
「……ん」
「何時の予約だったんですか?」

何気ない台詞なのは分かっている。
分かっているんだけど、『彼とずっと一緒にいた』ということが財前の片眉にシグナルを送ったようで。
無意識?いや、本能的にぴくっと上がったのは間違いない。

< 44 / 182 >

この作品をシェア

pagetop