サイコな機長の偏愛生活
5 不都合なものを見た時は、潔くgo-around

「元宮先生っ、彼女いるんですかぁ~?」
「それ、聞きたぁーい!」
「タダでは教えられないなぁ~」
「えぇ~っ」

十八時スタートで、医大近くの居酒屋で『親睦会』と称して飲み会が開かれている。
雑務をこなして十八時半過ぎに彩葉と元宮が合流すると、元宮待ちだった看護師たちが一斉に彼を取り囲んだ。

彩葉は医師仲間の尾崎とつまみを夕食にして、尾崎の恋愛相談を受け始めた。

「不規則な勤務体制のせいで、なかなか結婚に辿り着きそうにないんですけど……」
「分かるよ~、うちの科だと、ハードル高いよね……」
「環先生はどうやってすれ違い生活を克服してるんですか?」
「あっ!それ、俺も知りたいですっ!」

向かい側にいる元宮が急に口を挟んで来た。

「どうやってって……、小まめに連絡取って、少しでも逢える時間確保するしかなくない?」
「いい雰囲気になってる時に呼び出しされたら、相手と喧嘩になりませんか?」
「河合先生と喧嘩になるの?」
「……まぁ、毎回じゃないですけど」

尾崎の恋人は同じ大学病院に勤務する内科医の河合美奈(二十九歳)。
去年から交際がスタートし、院内でも知っている人は多い。

「それ、永遠のテーマですよね。外科医の宿命みたいなもんだし」

元宮はしれっとした顔で言い切り、ぐびぐびっと喉を鳴らしてビールを飲む。

「彩葉先生の彼氏さん、機長ですし、会社の経営もあってお忙しいですよね?更に外科医と付き合ってて、どうやって愛を育んでるんですか?」
「……う〜ん…」
「へぇ~、彩葉先生の恋人、パイロットなんだ」

元宮は長テーブルに頬杖をついて、目を細めながら空いたグラスにビールを注ぐ。

< 61 / 182 >

この作品をシェア

pagetop