サイコな機長の偏愛生活

軽く腕組してる彩葉の肩に顎を乗せた元宮。
彼の口元からアルコール臭がふわっと香る。

「近いっ」
「はいはぁ~い」

元宮から体を離そうと一歩左へずれる。

「お会計は三万六千七百二十円になります。お支払い回数は一回で?」
「はい」
「暗証番号の後に確定ボタンをお願い致します」
「あっち向いてて」
「ほ~い、ごちになりまぁ~す」
「はいはい」

レシートを受け取り、個室へと戻る途中。

「彩葉先生っ……」
「ッ?!……何、この手」
「飲み会が終わったら、少し話がしたいんですけど」
「……仕事の話?それとも、プライベート?」
「………」

手首を掴まれ、彩葉は元宮に鋭い視線を向けた、次の瞬間。
栗色をした髪がサラッと流れるように、彩葉の耳元に元宮の唇が近づいた。

「彩葉先生の……、…――……―…したくてっ……ダメ……ですか?」
「ッ?!………いや、それは私じゃなくても……」
「お願いしますっ……マジで…」

彩葉の肩に元宮の額が乗せられた。

掴まれている手首が少し痛むほどに。

「とりあえず、この手、離して。スタッフの誰かに見られたら変に誤解されるから」
「……はい」
「二人して戻るの遅いと何か言われちゃうから、戻るよ?」

彩葉は溜息を一つ零した。

**

「元宮せんせぇ~いっ、ご馳走さまでぇ~~す」
「ごっつぁんでぇぇぇ~すっ」

二次会のカラオケの会計を元宮が支払った。

「私が支払おうと思ったのに…」
「さっき支払ったじゃないですか」
「一応、これでも上司だし」
「例え上司でも、女性に全部払わせるわけには行きませんから」
「……ありがと。ご馳走さま」
「ど~致しまして」

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