恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
蒸してやわらかくしたパンとオムレツを出すと、無口な魔術師は少し驚いたようだった。
それにご飯が遅れても何も言わなかったから、きっと彼も食事を忘れていたのだろう。
お皿を並べながら、少し頼みをしようと口を開く。
「あの、この辺りに市場はありませんか?私、これ以外着る服を持って来なかったんです」
「ああ、それだが─」
「あ、あと。お金もないんです。......お金を、出して頂けませんか」
あんなに綿密に計画を練ったつもりだったが、焦っていて肝心の現金を忘れていたのだ。
というか、通貨違うなあって、今気づいた。
午前中の契約で、どんな形での給与かは話していなかった。