恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~

蒸してやわらかくしたパンとオムレツを出すと、無口な魔術師は少し驚いたようだった。

それにご飯が遅れても何も言わなかったから、きっと彼も食事を忘れていたのだろう。

お皿を並べながら、少し頼みをしようと口を開く。


「あの、この辺りに市場はありませんか?私、これ以外着る服を持って来なかったんです」

「ああ、それだが─」

「あ、あと。お金もないんです。......お金を、出して頂けませんか」


あんなに綿密に計画を練ったつもりだったが、焦っていて肝心の現金を忘れていたのだ。

というか、通貨違うなあって、今気づいた。


午前中の契約で、どんな形での給与かは話していなかった。
< 42 / 120 >

この作品をシェア

pagetop