恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
「ああ、それだが。この屋敷は3日おきに、本邸から使用人が来る。その時に食べ物の補充と洗濯をしてくれるから、ドレスも頼めば持ってきてくれるだろう」
優雅な仕草で食べ物を口に運びながら、イヴァンはいう。
性格や服装はさておき、作法や今の発言をみて、彼の育ちの良さを感じる。
使用人が世話をしてくれているから、台所や図書室はきれいなのだろうか。
そうなると疑問に残るのは。
「台所はきれいにされているのに、どうして食べ物はあんなに偏っているのですか。固いパンも、いつかお腹を壊します」
言ってしまってから少し後悔。
なぜかいつもこうしてしまう。
加えてこれは、相手を気遣っているのではない。
他人を気にして、どうすれば穏便に相手と過ごせるか。
それを探ろうと、把握していようと。
そういう考えに依る。
世話焼きと思われるのは筋違いだけど、でもこのズルさを、誰であったとしても見せるわけにいかない。
心に正直に生きようと飛び出したのに結局何も変わっていない。
自分に染みついてしまったこの癖が、すごく嫌いだ。
自由に生きること。
ほんとうに素敵だなと、いつも憧れを持っている。