恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
洗濯の手を止めずに続ける。
「でね、始まるの遅い割に、先生が、調理の先生がだよ、寒さで換気がどうとか言って今日の実習試験はなしです、って私たち寮に帰されるの。すごい理由だよね、先生帰って寝てるのよたぶん。でもそういう先生のほうが人気あるの!笑っちゃうわよね、...あ、あんま面白くない? ってそんな寒い?ごめん、ちょっと長話だったね。暖炉の火は燃えっぱなしだから給仕室はあったかいわ、きっと。先に行ってなよ。ごはんまだだけど、少し待っていてね」
「...今日はよく、しゃべるんだな」
「え?あぁ、...うん。ごめんなさい、うるさかったわね」
「別に謝れと言っている訳では無い」
「あ、ほんと?よかった、じゃあ続きはとりあえず部屋に戻ってから。今日だけは風邪ひいてもらっちゃ困るんだもの。だって今日は、」
────そう、今日という日は特別だ。
必死に頼み込んで、やっとイヴァンが承諾してくれたのだ。
「だって今日は、王都へ行けるんだから!!!!」