恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
彼がどういう感情なのかは、未だによく読めない。
服を投げるなんて、母さんがみたら怒りそう。
イヴァンについても今のは呆れ...かもしれないけど、ま、気にしない。
「民謡。名前は知らないんだけど、お母さまが昔、教えてくれた歌なの」
「民謡...アヴィヌラの?」
「そうよ、小さい頃はずっと歌っていたなぁ。久しぶりに思い出したわ、でも歌詞もちゃんと覚えてる。不思議ね」
「......一度だけ、聴いたことがあってな」
そうなの?と少しの驚きで、口を開く...が。
寒さに慣れない寝起きの体は本格的に冷えてきたようだ。
そんな君に、寒い私の故郷の話を、少しだけしよう。
「あのね、アヴィヌラはね、今とっても寒いと思うの。寒いから、冬になるにつれ朝が遅くなって、学校の始業も遅くなるのよ」
「ここも十分寒いと思うが」
「たしかに肌寒いけど、私は平気。...え、そこまで寒い、大丈夫?ちゃんといっぱい服着るんだよ」