鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 そうしてキースに指摘されて、オデットは自分が涙を流していることに気がついた。ぽたりぽたりと雫が頬を伝い、清潔に磨かれた木の床に落ちた。

(なんで……こんな時には、笑わなきゃいけないのに。キースの言う通りに、したよ。部下の人はもう、大丈夫だよって、明るく笑わなきゃいけないのに。怪我をして一番辛いのはキースなのに……何で私は、そんな簡単なことも出来ないの)

 心ではそう振る舞うべきだと、わかっていた。どうしても、それをすることが出来なかった。

 本当の気持ちは、大好きなキースを一番に優先したかった。けれど、彼の願いも叶えたかった。

 首を何度も振って、彼の元へと駆け寄った。ベッド側に座って、彼を見上げるとキースは微笑みながら泣いているオデットの髪を撫でた。

「……俺の願いを、叶えてくれてありがとう。辛い思いをさせてしまって、ごめんな……」

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