鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは、今までの境遇を考えれば当然のことだが働いたことなどなかった。どうすれば正解なのかと、そわそわして頭を悩ませるように両手を頬に当てた。

「まあ……少しだけ、待ってくれ。万が一のことがあってはいけないから、俺かアイザックのどちらかが君の傍に居る時に限られる。最初は治療院に居る重傷患者から診てくれたら、良い。治癒の魔法を使うことの出来る治療師も居るには居るが、数が足りない。君が来てくれたら、皆が喜ぶだろう」

「……私も、治癒だけではなくてキースのお仕事のお手伝いがしたいです。だって、私はキースと結婚するんでしょう? そうしたら、公爵夫人になるんだし。それまでには、色んな事が出来るようになっておきたいです」

 無邪気にそう問い掛ければ、キースは一瞬目を見開いて驚いた表情になった。

(え……? 変なこと言ってないよね……だって、私達恋人同士のはずだし……将来は結婚するはずだし)

 途端に不安そうな顔になったオデットに気が付いたのか、キースはコホンと咳払いをした。

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