鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 先ほど聞いた彼の身分から言えば、そういう関係となる。だから、キースは国王にも気安い口を聞き、国同士の火種にもなりかね無いオデットの身柄をどうするかということも彼の一存で決める事が許されているのだろう。

「……キース。この前にも、同盟国で戦いがあり本来なら国を護るための竜騎士団の大多数が長期間の遠征があったところだ。国民感情としても、お前達が他国のいざこざで遠征することに対する拒否感は強くなる……お前にもわかって、いるだろう?」

「わかってますよ。だが、俺が彼女を守ると決めました。ドワイド陛下が、それに対して圧力をかけるようであれば、俺は別に竜騎士団長をやめても構わない。ただ彼女が国に居るだけで悪いことになりそうだからと、政治的な妙な思惑で見捨てることはしません。俺が、そう決めたんで」

「キース……」

 険しい顔をしていた王はキースが団長を辞めると言った時点で、かなり顔色を悪くした。彼との初対面になるオデットにもわかる程に、明らかな狼狽した様子だった。

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