鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「ドワイド陛下。俺に助けを求めた子を、裏切りたくはない。もし、色々と面倒な事が予想され、それが許されないのなら。俺がこの子を連れて国を出ても良い。今自分が持っている何にも、特に未練はないんでね」

「もう良い。やめろ」

 壇上の王は不機嫌に手を振り、それを見てふっと息をついたキースは落ち着いた仕草で礼をした。

「……ご理解、ありがとうございます。表向きは、遠縁の女の子を預かるだけに。俺の遠縁って言っても、まぁ。少し、説明が難しいですけどね」

「お前は、特に王家の血が濃いからな。キース。それと、カトリーヌが……」

 国王は臣下である彼にも頼み難いことだったのかその後の言葉を止めて、明らかに目の前のキースの反応を待っている。

「その件に関しては何度も同じ返事を繰り返しになり申し訳ありませんが、俺は自分の部下に王族のご機嫌取りをさせるつもりはありません。一応は貴族の一人とは言え竜騎士の一人となったからには、それなりの職務についている。あいつもそれ程、暇でないんでね。それを望むのであれば、それ用の人員を雇ってください。カトリーヌ様にも、そのように」

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