鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 キースは無言のままの王に淡々と言葉を返して退室のための礼を取り、隣で立っていただけだったオデットの手を引いて謁見の間を出た。

 何も言わずに足早に進んでいた彼が、長い廊下を曲がったところでオデットに声を掛けた。

「……あー、まあ。だから。あまり、良い気分はしなかっただろ? あの人も、この国の事を第一に考えるという立場があるんだ。すまない」

 苦笑いをしたキースが足取りを緩めて振り返ったので、オデットは驚き慌てて首を振った。

「いっ……! いいえ。そんな……でも、キース様が王を脅すような言葉になられたので、びっくりしました」

 上目遣いをして背の高い彼を見上げれば、キースは小さく息をついて笑った。

「完全に、脅したな。俺もさっき、それなりの立場があるって言っただろ? それが、あれだ。現在竜騎士団に属しているひよこ共を統率するのは、王から見て俺が一番最適なんだ。そして、あの人は俺のことを無碍には出来ない理由がある。少し面倒事があって公爵家である俺も、ヴェリエフェンディの王族に名を連ねているんだ。それは、君が気にするような話でもないが。だから、気にせず俺に守られていてくれ」

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