鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

30 躊躇い

「っ……ちょっ……ちょっと、待ってくれ。ここは男にとって、とてもとても……繊細な事は……知らないか。オデットの身体にはないものだし。俺も、それは言ってないもんな。よし、わかった。俺が悪かった。言葉を間違った。オデット。これを持つのは別に良い。だが、力を緩めて……そうだ。何がしたいのかはわからないが、これを使って何かしたいのなら、どうぞ好きにしてくれ」

 キースは急所とも言える部位に、いきなり鋭い痛みを感じたせいか。いつもの余裕ある彼らしくなく一瞬だけ真顔になったものの、力の加減もなく繊細なものを掴んでしまった事に対して、犯人のオデットを怒らなかった。

 今までに見たこともないキースの反応に、とんでもない事をしてしまったのかと、オデットは慌てて握っていた手の力を緩めた。

「ごっ……ごめんなさい。痛かったです?」

 キースは浴槽の隅から手だけを伸ばしていたオデットを誘導するように、足を大きく開いてくれた。彼の両脚の間に収まり上目遣いをして紫の瞳を見上げれば、キースは知らないことは仕方ないと苦笑して微笑んだ。

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