鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 別にそれをして欲しいとは、言ってはいないのだが、すぐ傍に竜が居ればガヴェアの魔法使いも近付くことは出来ない。理解しているセドリックは、何も言わずにオデットの傍に居る。

(んー……どうするかな……一回、お茶でも淹れて、休憩しようかって言ってからにするか……)

 真面目な表情で机に向かいせっせと勉強をしているオデットを横目に、恋人に構って貰えないので不満を感じるという、人生初の感情を抱えているキースは頭を悩ませた。


◇◆◇


 遠慮がちなカーテンが開く音がして、キースははっと目を覚ました。

 自分の腕の中に居ると思っていた存在が、窓際で空を見上げていた。目を瞬き薄闇に差し込む光から、もう朝が来たのかと軽く欠伸をした。

「……おはようございます。キース」

 衣擦れの音がしたせいかキースが起きた事に気が付いて、オデットは微笑みつつ挨拶をした。

「ああ……おはよう。どうした。こんな早くに。目が覚めてしまったのか?」

 夜明けは来ているとは言え、今はまだ薄暗い。起き抜けの声のキースに、オデットは嬉しそうに首を横に振った。

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