鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「ふふ。この世のものとは思えないほどの、とても美しい風景を見ていました」

 意味ありげな彼女の言葉に、何を見ていたのかを察してキースは上半身をゆっくりと起こした。

「イクエイアスか」

「はい。本当に、夢みたいで……ちょっとだけ。不安になります。自分が今こうしているのも、夢の中なんじゃないかって」

 薄紫色の夜明けの空を泳ぐ上位竜に、うっとりと見惚れてオデットは呟いた。ほっそりとした小さな背中に近付きつつ、キースは彼女込みの美しさを心に焼き付けた。

「はは。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。この世界は、本当に不思議だな。そう思わせるほどに美しいものが存在している」

「綺麗……」

「まあ……確かに……この風景はとても綺麗だが、俺はオデットの方が綺麗だと思う」

「それって、口説いてます?」

 いつかの言葉をまた繰り返したオデットに、キースは彼女に手を回しつつ笑った。

「さりげなく言ったつもりだったが、わかったか」

 オデットは少しだけ嫌な表情を浮かべてから、結局はパッと花咲くようにして笑ってくれた。

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