鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットの言葉にアイザックは頷き、自分の前にお茶を置かれてから口を開いた。

「お姫様は、そろそろ返上か」

 揶揄うような彼の言葉に、オデットは苦笑して肩を竦めた。

「元々、お姫様でも……ないんですけど。私の二つ名については、ただ……生まれながらに私が月の女神の加護を、受けているというだけのものです。能力を高く売るための、商品名のようなものです。現に王族の血なんて、一滴も入っていませんし」

 アイザックは、オデットの言葉を聞きつつ何度か頷き感心するように言った。

「高く売るための……商品名ねえ。大事に大事に育てられた何も知らない籠の鳥かと思えば、そうでもないらしい。自分の立場は、冷静に見えているようだな。お姫様の事情は、一応俺も聞いてる。産まれた時から、他人に能力を利用される人生など、俺にはゾッとする。本当に、大変だったよな……ああ。だから、あのキースが君をどうしても守りたいと思った気持ちがわかったんだ」

「……キース様が……ですか?」

< 59 / 272 >

この作品をシェア

pagetop