鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「そうだ。あいつはこの国でも……王族の血を持つ竜騎士団の団長と言う身分以上の、特別な存在だ。今の王には、世継ぎの姫一人しかいない。息子が欲しかっただろうが、俺のような者には知ることの出来ないどう言った事情か知らないが。今代王には、子どもがその姫君以外には出来なかったんだ。そして、その姫というのも、隣国から嫁いで来た側妃様との政略婚の末に出来た姫君でね。正妃に対抗意識のある側妃も健在だという事は、この先隣国の影響力が強くなるのは必至だ。だから。王としては、キースの存在がある種の抑止力になることを望んでいる」

(キース様が前に言っていた……どうして俺でなければいけないんだって苦しんだって、この事だったんだ。彼が王族に名を連ねていれば、側妃様からの反発は絶対にあるだろうし、姫様側の人間から見れば……キース様は、邪魔者になる……どうしても、憎まれ嫌われるだろう)

「抑止力……」

 従兄弟の王からの切なる願いと、その妻の側妃から疎まれる辛さ。板挟みに近い立場に、キースはずっと耐えて来たのだ。

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