鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 自分が飛行船で連れ去られそうになっていた時に、竜たちは助けに来てくれた。

 キースの竜セドリックなら、月の光をもう一度浴びることが出来る雲の上にまで、オデットを簡単に連れて行ってくれるだろう。

(そうよ! セドリック!)

 オデットは慌てて部屋を出て、階段を駆け降りた。そこに、今探しに行こうとしていた人が玄関から入って来て慌てて足を留めた。

「俺を、呼んだだろう」

「……どうしてわかったの?」

 先んじて彼に言い当てられて、オデットは驚いた。セドリックが心を通じる事の出来るのは、契約している竜騎士であるキースだけなのではないか目を瞬かせれば、彼は珍しくふっと笑った。

「竜騎士の竜は……契約している男の大事な相手の心の声にも、耳を澄ませるようになる。どうした?」

「私を、雲の上に連れて行って欲しいの! すぐに! お願い!」

 セドリックは彼の腕を持って必死に言い募るオデットの願いを聞いて、良くわからないという顔をしていた。だが、無言で玄関を出るなり闇を弾くような銀色の竜に姿を変えた。

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